こだわりの技 衣装着人形

石川潤平工房の衣装着人形

手彫りのお顔─表情の出方が違います─

手彫りのお顔

  • 手彫りの顔であるからこそ、灯りに照らしたときの陰影の出方が違います。
  • お人形は顔が命であるからこそお顔の清廉さをぜひご確認ください。
  • また、髪の毛の生え際にも注目です。一方行からの筆入れのみで仕上げているので 姫は姫らしく、殿は殿らしく作り込まれています。

重塗胡粉仕上

重塗胡粉(かさねぬりごふん)仕上

伝統の技法です。胡粉とは貝殻を粉末にして膠(にかわ)で練った日本古来の素材です。
この胡粉を重ね塗りすることでお顔の立体感を出し、目や小鼻そして口を彫刻刀で削り、やさしく温かみのある豊かな表情に仕上げます。
最後に、仕上げたお顔に眉や紅などの化粧をし、次に結髪の工程に進みます。

やすひろ作:極上夢香雛「神聖黄櫨染」

やすひろ作:極上夢香雛「神聖黄櫨染」

こだわりの技 口結び
衣裳着人形であっても、作品によっては写真のように口を閉じた(口結び)人形があります。同じほほえみでも口を開けたもの(一瞬の表情を切り取った断面)に比べて奥が深く、崇高な気品を感じます。

自然な風合い、正絹植え込み結髪

─絹糸を使用 ナイロンは一切使用しません─ 林人形工房のおひなさまの髪は「スガ」と呼ばれる正絹糸を使用。お顔の周囲に“毛彫り”という溝を彫り、スガを植え込む「正絹植え込み結髪」という伝統技法で作られています。
一般には、溝に直接植え込むのでは無く、別に用意したナイロン糸製の紙のパーツをお顔に組み合わせるという製法です。ナイロンは安価ですが、ナイロンの髪は光の反射が強すぎます。職人仕上げのひな人形がわざわざ高価な正絹糸を使う理由は、しっとりとした自然な風合いが髪に出るからです。それによって人形の表情も全体のたたずまいもごく自然で、落ち着いたものになります。

古典下げ髪

古典下げ髪

選べる髪型

伝統の髪型 髪型には「古典下げ髪」「おすべらかし」の二種類があります。
古典下げ髪は“割り毛”とも呼ばれます。平安時代に誕生した日本古来の髪型で、江戸時代、明治時代のひな人形にも用いられた優雅で気品ある髪型です。
一方、おすべらかしは江戸時代後期に完成されたひな人形の歴史においては比較的新しい髪型で、現代では皇室の行事にも用いられています。
古典下げ髪は非常に高度な技術を要するために、現在ではこれができる職人の数が少なく、一般のお店ではほとんど取り扱いがありません。

おすべらかし

おすべらかし

生え際生え際詳細生え際
 薄めの墨で、殿は三本置きに長い線を一本入れて男性の迫力・力強さを出しながら等間隔に丁寧に描きます。姫は女性らしい優しさを表現するために長い線は入れません。
 殿と姫でそれぞれ毛書きの表現を変えている衣装着人形は他に類がありません。

眉
 眉の形、均等な毛書き技法はまるで羽毛のようで気品を感じます。
 人の眉と同じように細かい線を縦に重ねて眉毛の形にしています。極限のこの技法は一般品にはありません。

手、指先まで造り込んだ自然な造形 ─ 職人の技

ひな人形飾り例

殿の手

殿の手

 林人形工房のおひなさまは、デッサンに基づいた理想の形を追求しており、作品一つ一つに合わせた大きさや形の手で製作されています。
 ふっくらした指先の形や爪の形、爪の色や握ったときにできるしわも、限りなく自然な人の手に近づけ表現されています。高貴な人はめったに肌を見せないために、殿の左手は自然に袖を握るようなしぐさになります。
 しかし一般には殿の左手は不自然に開いたままになっています。これは既製の共通部品の手を使用しているのですが、この手がコストを抑えるために姫の左手と共通で使えるようになっているからです。

姫の手

姫の手

一般的な手

一般的な手

結び紐のない式正冠(しきせいかんむり)

平安時代の日本人の冠の正式な着け方です。冠の中の「マゲ」に串を挿して固定していますので、余分な取り付け紐がありません。紐が無いために、お顔が前後で分断されずスッキリ見えます。また一番の見せ場である胸元に大きな結び房が下がることがなく、衣装がいっそう美しく表現されます。
この正式な方法で冠を固定するためには、お顔の大きさと冠の大きさ・冠の形とマゲの位置・差込穴とマゲの位置がそれぞれピッタリ合っていることが必要です。頭師・結髪師・冠の作者が三位一体でないと不可能であり、同一工房でなければできない完成度の高い取り付け方法です。

一般的な冠と式正冠

ひな人形飾り例

立纓冠(りゅうえいかん)と垂纓冠(すいえいかん)

垂纓冠

垂纓冠

 おひなさまというと上の写真のように纓がまっすぐ上に伸びた“立纓”が一般的ですが、実は立纓は江戸時代中期になってから天皇のみが用いる“しるし”でした。本来は、平安から江戸時代中期までは、天皇、公家、武家すべてが垂れた“垂纓”を着装していました。

デッサンに基づく完成度の高い造形

ひな人形飾り例

デッサン

自然な肩幅、安定感のある三角形

 ものを作るには必ず設計図が必要です。車でもカメラでも一番最初の段階としてデザイナーが自分の感性でデッサンを描きます。理想のデッサンが出来上がったら、それをもとに設計図を作ります。そしていよいよ実際のもの作りの工程となります。しっかりしたデザイン(デッサン)と設計が製品の良し悪しを決定づけるといっても過言ではありません。
 工業製品でさえこのような工程があるのですから、美しさを追求する鑑賞品はやはりデッサンをもとにつくられなければなりません。ひな人形はいうまでもなく鑑賞して楽しむものですから、林人形工房のひな人形はすべてこのような工程を経て作られています。
 最初に絵画や彫刻などの芸術分野を学び身につけた作家が、冠から座台までを含めた造形が美術的・視覚的に安定感のある正三角形に納まるようにデッサンします。それをもとに彫刻(粘土)で立体にし、お顔や冠、手、胴などそれぞれの部分を同一工房の職人が製作します。そしてそれらを元通りに組み合わせることで、はじめに描いたデッサン通りの理想の形のおひなさまに仕上がるのです。

衣装のこだわり

衣装は京都の西陣織りで縦糸と横糸が正絹で織られた極上品です。天命を全うする99歳まで飾って頂けるように、長い人生60歳を超えてからも人形を愛でていただけるような風合いのお衣裳を先生が選別しています。(一部の商品には正絹でないものもございます)
立涌文(たてわくもん)は、立枠文(たちわきもん)ともいわれ、2本の曲線を用い雲気、水蒸気が涌き立ちのぼっていく様子をあらわしていて、有職文様のひとつです。曲線のふくらんだところに、雲、波、藤、菊、松などを入れて、雲立涌、波立涌、藤立涌、菊立涌、松立涌と立涌の中にもさまざまな文様があります。歴史上の屏風や宝物などにも、また能の装束などにも立涌文が用いられています。
唐草文は、蔓草(つるくさ)の蔓や葉がからみ合い連続的に曲線を描いている文様で、牡丹(ぼたん)唐草、葡萄(ぶどう)唐草、菊唐草、梅唐草、桐唐草、藤唐草などがあります。歴史は古く、また風呂敷の模様としても用いられていることから、よく知られている文様です。
四菱は菱の文様を4等分し、それを四つの花弁とみたてた文様で武田菱ともいわれ、有職文様やさまざまな宝物や古裂などで見かけられます。四菱はまた花菱として家紋にも用いられています。

立涌文 唐草文 四菱

(左から)立涌文 唐草文 四菱

極上檜扇

やすひろ作:極上夢香雛「浅葱牡丹唐草」

やすひろ作:極上夢香雛「浅葱牡丹唐草」

極上檜扇

極上檜扇

お姫様の檜扇(ひおうぎ)も一般品とは違い、画家が繊細なタッチで胡粉塗りの白い扇に絵を描いた特注品です。松竹梅がこれほどきれいに描かれている扇は他にありません。
また、房とひもにも正絹を使用しており発色の美しさが違います。房は金糸銀糸と十二色三十二本で織りなす繊細で優美な房です。(高価になるためオプションとなります。極上品には付いています)

ひな人形飾り例

毛氈とは・・羊毛その他の獣毛を原料とし,湿気と熱,圧力,摩擦を加えて 繊維をからませて作ったもの(yahoo!辞書より)

赤い毛氈 六曲金屏風で飾る意味

ひろふみ作:古典創作雛「亀甲浅葱」

ひろふみ作:古典創作雛「亀甲浅葱」

日本に現存する最も古い時代の毛氈は、奈良時代に新羅 から伝わったものと言われており、正倉院に納められています。 今日では慶事に使われる他、魔よけの意味合いもあるので桃の節句にぴったりです。
また、六曲金屏風を使う理由は、古来から六曲屏風は「室内を間敷く(まじく)もの」として用いられてきました。ここから転じて「仲睦(なかむつ)まじく」と縁起ものとなっています。そして金色は立身出世を意味し金色の輝きを人生に照らせるようにとの思いがこめられています。

日本庭園の美 間引く美

─花瓶に生花で─ 今日では西洋文化の影響もあり、足し算で空間をつくる手法もでてきました。わいわい賑やかにかざるのもよいですが、空間美を活かした飾り方を日本人の根底にはあるので、その深層心理に働きかけます。 また、当店では造花で飾るのではなく生花を飾ってほしいと考えています。
桃の節句・端午の節句は季節の節目をお祝いするという意味もありますので、道端に咲く野花などをお子様と一緒に探して是非とも情緒教育にも役立てて頂きたいと思っています。
そして生花を飾れる理由の一つに「人形が本物である」点が挙げられます。少し抽象的な表現になりますが、本来生花は生きているのでお人形と一緒に飾ると花が主役になってしまいます。しかし、当店のお人形は生花を脇役にできるほどの力があるのです。

ひな人形飾り例

殿さまと姫さまの位置に注目

ひな人形飾り例

 御所における玉座の位置や宮廷儀礼にならって殿を向かって右側。姫を向かって左側が日本式の並べ方です。
 古来中国でも「左上右下」「天子南面にして東に座す」など、向かって右側が殿でした。国技すもうは東が正横綱です。しかし大正天皇の即位の儀より、欧米式の並び方で左右が変わったのです。
 当店では日本の2000年の歴史を紐解く伝統的な並びを推奨しています。

ひな人形飾り例

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